講演タイトル

エンゲージメントコマースとファン創り
〜仕組み編〜

濱野 幸介(はまの・こうすけ)

講師プロフィール

濱野幸介(はまの・こうすけ)
※1株式会社リヴァンプ、株式会社良品計画での勤務を経て、2016年11月にプリズマティクスを設立
クラスメソッド株式会社 執行役員
マーケティング・テクノロジー担当を兼務
スマートフォンアプリ「MUJI passport」の開発を牽引
カレー好き

‹ Section 1 › 高まるエンゲージメント、伸びる購買額。

オムニチャネルのCRMを構築するために、濱野さんはまず「顧客時間がどこにあるのか」について考える情報を紹介します。
調査会社ニールセンの「月間スマホ起動日数」調査によると80%以上の人がほぼ毎日スマートフォンを利用。ヘビーユーザーほどSNSとゲームに時間を使う割合が高くなっています。
しかし、トレンドに乗ってスマートフォンアプリを出せばいいわけではありません。

アプリランキングのトップ10を獲得したアプリでも、90日後には40%しか使われなくなるからです。これがランキング5000位くらいになると、使わなくなるユーザーの割合は90%以上にまで上がります。

続いて濱野さんは良品計画のスマートフォンアプリ「MUJI passport」の利用状況を共有します。
ユーザーがアプリをDLした理由を、複数回答可のアンケートで尋ねると「買物前に商品をチェックする」が51%、「オンラインショッピング」が39%、「キャンペーン情報を見る」が32%となっています。
ウェブで商品詳細ページを閲覧した人の購入先は「ネットストア」より「店頭」が多く、ウェブで情報を見て店舗で買う人が実際に多いことが読みとれます。

注目すべきは、顧客が濃い体験をするとブランドロイヤリティにもいい影響が出ている点です。「アプリを単に利用するユーザー」を「1」としたときに、年間購買金額に対して実際に次のような数字が出ています。

  • アプリ内でコメントをするユーザー → 約2倍
  • イベントに参加するユーザー →約2.5倍
  • 「こんな商品が欲しい」とリクエストする「IDEA PARK」へ参加 → 約3倍

‹ Section 2 › オムニチャネルCRMを構築するには?

ここまで現状を取り巻く環境を振り返ってきましたが、ここからは今後どのような施策をとるべきなのかに話題が移ります。

昨年、GENKINGさんが「Googleはリアルじゃない」と発言したことが大きな話題となりました。その意図は、Googleの検索結果はSEO対策がされていたり、広告が表示されたりするという点にあります。

そのため、消費者がどこにリアリティを求めるのかを探らなくてはなりません。SNSにも広告は入りますが、そのカスタムオーディエンスの精度は高く、濱野さん自身も「facebook」や「Instagram」で心が動いた広告があったと紹介します。マス広告を打たなかったり、実店舗を持っていなかったりしても、一人ひとりにアプローチできるようになっているのです。

ただし、リーチすれば必ず購買につながるわけではありません。無印良品ではドラマ「デスノート」最終回に合わせた投稿をSNSで発信し、5万リツイートを達成。約1000万人へリーチしましたが、ほとんど購買には影響がありませんでした。反対にSNSでバズることで完売につながった事例ももちろん出ています。

さらに今後、実用性が高まるVRや機械学習、音声認識などのテクノロジーも駆使して、顧客のエンゲージメントを捉えていくことが重要になってくると濱野さんは予測します。
こうした状況を踏まえ、どのような仕組みを構築すべきなのかという課題に、濱野さんが立てた仮説は「コミュニケーションハブ」を作ることです。

購買だけではなく、その前後も含めて消費者の心が動くポイントは多くあります。「ブランドサイト」でのニュース配信、「ソーシャルメディア」でのニュース・広告配信、「ネットストア」での商品情報・在庫情報、「会員組織」へのメールマガジン、「モバイルアプリ」でのプロモーション情報など、それらを裏側で一元管理することができるハブが必要なのです。そうした各コミュニュケーションの手段をクラウドベースで、APIで連携させてつなげる基盤をつくることが、今後のオムニチャネルでのCRMを実現させる具体的な仕組みの一案だと濱野さんはまとめました。

Other Reports

PAGE TOP