講演タイトル
飲食店・小売店の売上改善を支える
3つのデータ活用

講師プロフィール
神谷勇樹(かみや・ゆうき)
株式会社リノシス代表取締役
東京大学大学院修了
株式会社ボストンコンサルティンググループ、グリー株式会社を経て、株式会社すかいらーく入社
「すかいらーく」アプリプロジェクトを牽引
2016年、株式会社リノシスを創業
‹ Section 1 ›POSデータから顧客を可視化

‹ Section 2 › 3つの軸でデータを活用
神谷さんはリノシスで実践するデータ活用について「トラディショナル分析」「機械学習の活用」「位置情報の活用」という3つの観点から説明を続けます。
まずは「トラディショナルな分析」として、販促ミックスにデータ活用を用いる手法です。ある企業でのデータ活用前の段階では、広告宣伝費を前年から大幅にも増やしても、売上高はわずか増加しませんでした。
ところが、データを活用後は、広告宣伝費を大きく削減しても、売り上げが前年をはるかに上回ったのです。
具体的に行なったのは「新聞Aへの折込」「新聞Bへの広告」「新聞Cへの折込」「DM」など、これまで見えていなかった各販促施策の費用対効果をデータ活用できちんと可視化すること。
それにより、効果の高い順に予算を割り振ることができるようになり成果を達成しました。

さらにクーポンの内容改善にもデータを活用します。例えば、500円引きのクーポンを発行したとすれば、これまでであれば「クーポンが何枚使われたのか」はわかっても「クーポンがなくても来店していた」「500円ではなくて100円引きでもよかった」「違う種類のクーポンの方が効果的だった」などの効果は全く見えませんでした。
しかし、データにより「客数増」と「粗利影響」の軸で整理していくとクーポンの効果を可視化が可能に。単なる「お会計10%オフ」のクーポンよりも、必ず親と一緒に来店し、親も購買する「お子様メニュー80%引き」のクーポンが、粗利向上の観点からは効果的だったなどと読み取れるのです。

2つ目は「機械学習の活用」です。機械学習を活用すると、「クーポンAを発行した場合」「クーポンBを発行した場合」「クーポンを発行したなかった場合」に来店確率がどのくらい変わるかが、お客様ごとに計算できます。
つまり、「クーポンがなくても来店する確率が高いお客様」には無駄なクーポンを発行しなくて済むようになるわけです。これは売上だけではなく、ブランド価値を守るためにも有効です。
お客様ごとに異なるフックを理解したうえでもっとも効果的なコミュニケーションが取れるようになったことで、来店確率のコンバージョンも3倍に上がったという事例も出ています。
さらに、お客様の見える化にも機械学習を活用していると神谷さんは解説します。POSデータや会員属性、共通ポイントプログラムの購買履歴などのデータからクラスタ分析を行い、類似した嗜好の顧客セグメントを作り、各セグメントの人数を定量化。企業は各セグメントにごとに商品から販促までを一気通貫で設計・実行することが可能になります。
その他にも、ユーザーの嗜好をより把握するための取り組みとして、5000アイテムもある各メニューに「さっぱり」「こってり」「肉」「魚」など100ほどの属性を割り振っているとのこと。それらを分析することにより、どのようなお客様がいるのか、購買の理由までが見えてくるため、店舗ごとのMD最適化や新商品開発、パーソナライズしたクーポンといった施策が効果的に打てるのです。

最後は「位置情報の活用」です。リノシスでは位置情報を使って、お客様がどのような人なのかのプロファイリングも行っています。
例えば、自店舗と複数の競合店舗にジオフェンスを張り、スマホを持ったお客様を分析します。これにより「競合店aにはどういう人が来店している」「競合店bのキャンペーンが自店舗のこれくらい利益を奪っている」「同じチェーンのcと商圏がかぶってしまっている」などを分析することが可能です。
神谷さんは「お客様の見える化」を成果に繋げていく様々な施策を実践するために、是非データを活用してみて欲しいとまとめました。
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