講演タイトル

Omni-Channel時代のマーケティング戦略
お客様と時間を共有し、絆を深めるEngagement Commerce

奥谷孝司(おくたに・たかし)

講師プロフィール

奥谷孝司(おくたに・たかし)
※1オイシックス株式会社執行役員 COCO
プリズマティクス株式会社エンゲージメント・コマース・アドバイザー
1971年生まれ。大阪府出身。1997年に株式会社良品計画入社
店舗、商品開発などを経験した後、スマートフォンアプリ「MUJI passport」のプロデュースを統括
2015年10月オイシックス株式会社へ入社。「LEGO」好き。

※1 表記は講演当時の表現。現在はオイシックスドット大地株式会社

‹ Section 1 › 「顧客時間」を理解する

オムニチャネルへの対応が求められる現代では、「顧客時間」を考える事が大切だと奥谷さんは強調します。

顧客の商品購買における意思決定プロセスを時間軸で考えると、「検討」→「購入」→「使用&消費」という流れになります。従来はこのうち「購入」にのみ注目が集まっていました。
それは、オフラインでは「購入」しか把握することができなかったからです。
しかし、オムニチャネル化が進む現在はその前後、「検討」「使用&消費」のプロセスも可視化されるようになっています。そこで、奥谷さんはこの全てのプロセス、つまり「顧客時間」全体を攻めて、売上だけでなく顧客との絆を作っていくべきだと指摘します。

良品計画時代に奥谷さんが立案したショッピングアプリ「MUJI passport」では、「店舗でどの商品がどのくらい売れた」「誰が買ったか」などが見えるようになりました。消費者データの2〜3割を取ることができれば、統計的に有意であるため、ここから全体を推測していくことも可能になります。

また、顧客時間を可視化するだけでなく、アプリをDLしてくれた消費者はエンゲージメントも高い傾向が見られます。
奥谷さんはオイシックスへ入社した後も、顧客時間を可視化するミッションに取り組みます。
生鮮食品を中心としたEC事業を展開するオイシックスでは、定期的に商品をお届けするサービスに注力しています。その特徴は顧客のカートの中に既に商品が入っていること。

消費者は不要な商品を削除することで意思決定をしていると感じ、奥谷さんはこれを単なる「検討」の代わりに、「能動的意思決定」と呼んでいます。 つまり、オイシックスの顧客は「能動的検討」「購入」「使用&消費」という顧客時間を有しているわけです。この「能動的検討」は、購買プロセス時に消費者が迷う時間を短縮させる効果があると奥谷さんは分析。
そこから得られたデータはパーソナライズ化、自動化に活用しています。

‹ Section 2 › ブランドを強くする「ワルダクミ」

続いて話題はCRMの活用について。

現代はCRMのデータを「集める」時代から、「取りに行く」時代に変化しています。チャットボットなどのコミュニケーションツールや、GPS、ビーコン、VR、IoT、AIなどを活用してデータを取りにいくことが求められているのです。その先にはデータをとるチャネルがますます多様化し、オムニチャネルがさらに進んだ新しいECの時代が待っているわけです。

しかし、奥谷さんは、経営者やEC担当者は、ECの売り上げをあげるためだけにデジタルを活用する戦略をとってはいけないと指摘します。それは、ECの市場規模は年々成長すするものの、現在の小売では消費行動の半分以上がオフラインで行われるからです。

近年では、オフラインの接点にもなるオンラインのサービスも増えてきており、オフラインの売上を伸ばすためにもデジタルを活用していくべきなのです。このように多くの接点で顧客との絆が求められる新しいECを、奥谷さんは「エンゲージメントコマース」と呼び、モバイルファーストで全社戦略を進めていく必要があると提唱します。

このエンゲージメントコマースを実践するために奥谷さんが関心を寄せるのが「ブランドジャーナリズム」です。

企業は消費者としっかり繋がるために、対話や相互理解を深めながらエンゲージメントを高めていかなければなりません。加えてポイントとなるのが、お客様がブランドを「自分事化」してくれること。

地方から生まれた「九州パンケーキ」はその最たる例です。「九州さえよくなればいい」とポジションニングを取り、愛さない人を決めた上で、地域の方に圧倒的な体験を提供しています。

奥谷さんはこれを「閉じる戦略」と評します。企業はプッシュではなく、ブランドのポジショニングを変えずにプルし、「よい悪巧み」をしていく必要があるのです。

新しいECであるエンゲージメントコマースでは、お客様との絆づくりが求められ、そのためには「マーケティング」と「IT」を融合させてなければいけません。最後に奥谷さんは、デジタルだけでなく、お客様を感動させるコミュニケーションを提供できる企業が強くなっていくとまとめました。

※1 表記は講演当時の表現。現在はオイシックスドット大地株式会社

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