講演タイトル

"個客"のモーメントとダイレクトな
コンテンツマーケティング

吉田 浩子(よしだ・ひろこ)

講師プロフィール

吉田 浩子(よしだ・ひろこ)
株式会社YUIDEA デジタル×グローバルマーケティング部 部長
学習院大学卒
産業能率大学や株式会社ディーエイチシーなどでの勤務を経て
シータス&ゼネラルプレス(現、YUIDEA)へ入社
好きなバンドは「ユニコーン」

‹ Section 1 ›「顧客時間」を理解する

デジタルでの「コンテンツ創り」と「場づくり」をミッションとしている吉田さんは、まずインターネット広告の現状を紹介します。
2014年にはインターネット広告への出稿額が1兆円を超えるなど、この10年でインターネット広告の存在は急速に成長してきました。リーチではテレビCMには及ばないものの、消費時間とリーチが雑誌を上回るなど、インターネットは必要不可欠のコミュニケーションツールとして認識されるようになっています。
また、生活者に「おもしろいコンテンツなら広告でもかまわないと思うか?」とアンケートを取ると、特に若い世代や65歳以上の世代では広告を容認する傾向が見られるのも面白い点だと吉田さんは紹介します。

このように個々の生活者が常にオンラインと繋がることができ、多種多様の価値観を持つ現代では、「マイクロモーメント」を知らないと生活者とうまくコミュニケーションできないと吉田さん。
「マイクロモーメント」とは、「生活者がその瞬間に考えているコト」を指す言葉です。プライベートDMPで「いまの行動ログ」を捉え、さらにパブリックDMPから取得した情報で「ユーザーの好み」を掛け合わせて「マイクロモーメント」を把握します。
そして、マイクロモーメントを捉えたコミュニケーションをするためには、「EC」「ウェブ」「CRM」が三位一体となった統合型マーケティング活動が必要になってくると吉田さんは提唱します。

それは、生活者とウェブ担当者に、ウェブだけでなくリアル店舗も含めた様々な点でコンタクトポイントがあるからです。吉田さんは、そのコンタクトポイントごとに施策を区切り、それぞれの施策でコンバージョンと対策を立てる手法や、カスタマージャーニーを使った手法を紹介します。

カスタマージャーニーとは例えば、「興味喚起をあげる」「会員登録」「購買する」「2回目にプロパー以上で購入する」「一定額以上購入する」「ファンになる」など生活者の行動を可視化したモノ。可視化することで、この行動ごとに施策を打てるようになります。

YUIDEAが提案するのは、コンテンツマーケティングを効果的に使い、「興味喚起」前のタイミングで「生活者に偶然出会う」、「発見してもらう」きっかけをつくること。そのポイントを吉田さんは2つ挙げます。

(1)自らのコンテンツプラットフォームを持つこと
(2)SNSなどオンラインに自身のコンテンツを配信、拡散する場を持つこと

生活者が情報を検索しているときに出会える接点をつくり、さらにその場は「心の動きを最大化できるストーリー型の体験価値コンテンツ」であることが望ましいと吉田さんは説明します。「役に立つ!」「面白い」「便利」といったストーリーは記憶に残りやすく、人に広まりやすいからです。

‹ Section 2 ›デジタルトランスフォーメーションは、まずはチームから。

続いて吉田さんは、企業や組織でデジタルトランスフォーメーションがどのように進んでいるのか紹介します。

現在、中川政七商店や三越伊勢丹ホールディングスの事例にみられるように、多くの企業で「CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)」という役職が取り入れられています。「CDO」は、組織全体のデジタル戦略を統括し、必要な改革を部門横断で推進できる経営幹部。小売などのリアルな接点をもデジタルに取り入れ、企業の成長を目指す取り組みを進める役割です。
さらに、多くの企業がウェブサイトを持ちオンラインを活用しています。広告配信やリード獲得など活用の目的も明確に持っている企業が多く存在している状況です。

しかし、人材面ではインターネット活用の担当者は74%の企業で1〜3名ほどしかいなく、それも兼任であるケースがほとんどです。

吉田さんは、企業のデジタル化を「デジタルの理解」「デジタル活用」「事業を大幅に変更するデジタルトランスフォーメーション」の3段階で捉えていますが、現在の状況をふまえると日本のほとんどの企業は「デジタルの活用」の段階にとどまっていると分析します。

今後は顧客中心に考え、組織自体を大きく変える3段階目に移行していくことが求められます。そのためには、いきなり部門横断ではなくとも、サービス担当チーム単位で顧客中心に考えて、スピーディにコンテンツマーケティング、デジタルマーケティングを行うことが必要です。さらに既存のDMやカタログなどのコンテンツも活用していくべきだと吉田さんは提案します。

まず、チーム単位で取り組みを始めるにあたり、ポイントとなるのは次の3点。

(1)「Google Analytics」などでデータの可視化を進め、エンゲージメント指標を常時チェックできる状態をつくる
(2)そこで得た課題に、マーケターのみではなく「チームで」解決策を講じる
(3)高速に改善しながら、「faccebookとブログ」「ブランドサイトとtwitter」のように最善の形で常に生活者と繋がっている状態をつくる

最後に、こうした取り組みにおけるコンテンツづくりのポイントとして、「顧客ひとりひとりのニーズを満たす」「定期的な発信をする」「人間味を出す」「100万人ではなくて、100人に気に入ってもらうコミュニケーションに努める」ことなどが重要だと吉田さんはまとめました。

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